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ブランド・マーケティング見聞録

40年以上のキャリアを有する、クリエイティブ・コネクション
代表取締役の町田が、あれやこれやブランド・マーケティングについて語ります。

あること、ないこと、よもやま話
電通の社員「個人事業主化」制度が気になる。
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今年から大手広告代理店の電通が一部の正社員を業務委託契約に切り替え、「個人事業主」として働くという新制度を導入しています。まずは全社員の3%の約230人が対象だそうです。

従来、電通では副業が禁止だったので、新制度の導入で兼業や起業が可能となり、多様な働き方が生まれるとしています。しかし、それが本当の狙いなのでしょうか?

私がコピーライターとしてキャリアをスタートさせた80年代の初めごろは、「いつかはクラウン。」のコピーのように、ステップアップして「いつかは電通。」を目指す広告マンが多かったように思います。

当時から広告界における電通のパワーは断トツで、テレビを中心にマスメディアの媒体枠を抑え、単に広告だけでなく、番組、そして大規模イベントなども仕切る。おまけに給与が良いのですから、広告マンとして憧れるのも当然です。実際に何人もの同僚や後輩たちが電通に転職していきました。

その一方で、実力のあるクリエイターなどは電通を辞めて独立しますが、その後も引き続き電通からの仕事を受けているケースが結構あります。そう考えると、今回のようにわざわざ新たな子会社までつくって社員と個人事業主契約を結ぶというのは、違和感を覚えます。

体の良いリストラ&労働基準法逃れ?

あくまで私見としておきますが、電通が今回の制度を導入した目的は2つ。それは①余剰人員を整理して人件費を抑制する体の良いリストラ②働き方改革を隠れ蓑にした労働基準法逃れです。

まず①ですが、広告代理店はリストラがむずかしい業種です。億単位の広告費を任せる大手クライアントが、簡単にリストラをするような会社に仕事を依頼するでしょうか?広告代理店にとってクライアントからの信頼が何よりも重要なのです。

日ごろ、「ブランドは信頼性が大切です」といっている広告代理店が、自らのブランドイメージを下げるような行動は慎まなければなりません。

もう20年以上前になりますが、私が在籍していた某広告代理店でも表立ってリストラはせず、自主退職をするように、役職を解いたり、仕事量を減らしたり、席を端に移したり、色々と仕向けていましたから。今なら完全にパワハラですけどね。

私の場合は、会社の方針と上司の態度に耐え切れなくなり、発作的に辞表を出しましたが、それも自主退職を促す作戦だったりして…w

電通はこれまでにも何度か希望退職者を募ったと記憶していますが、今回はあくまでも新制度導入ということにしたいようです。ちなみに、私の後輩は割増の退職金を貰って辞めたと聞いています。

次に②ですが、電通社員の「過労自殺事件」を覚えてますでしょうか?悲惨な事件でしたが、昔から広告代理店に勤める者にとっては、残業や厳しいノルマなどは当たり前という風潮があります。

電通の4代目社長だった吉田秀雄氏が書いた電通マンの行動規範ともいえる「鬼十則」は強烈で、ネット検索をすれば見ることができると思います。

広告代理店は他の業種と違って基本的に生産設備は必要ありません。すべて“人”が動くことによって利益を生み出しています。それ故に、社員の知力、体力、胆力の勝負となり、プレッシャーも相当なものです。私の周りでもノイローゼになり、業界を去った者が少なからずいます。

よく官庁街の霞が関が“不夜城”といわれていますが、広告代理店と、それに連なる広告制作会社、編集室…なども、立派な“不夜城”です。私自身も広告代理店でプレゼンのための二徹三徹、一昼夜かけてのCM撮影、真夜中の編集作業など、何度も経験しています。

忘れられないのは、某CM制作会社で夜の10時ごろプランナーを交えてプロデューサーと打合せをしていると、突然「そろそろ会議室を空けないと!」といわれました。理由を聞くと「これから某広告代理店の方々が来て、たぶん朝までアイディア会議なんですよ…」

どうやら某広告代理店は社員の長時間労働を抑制するため、10時以降はビルを閉めることになったのですが、仕事の続きをCM制作会社で行うということのようです。まったく馬鹿げていますよね。

話を戻して今回の電通が導入した制度ですが、「社員」が「個人事業主」として働くわけですから、個人の長時間労働などは発注する側の問題ではありません。すべては受注する側の判断に委ねられます。

例えば、スケジュール的にちょっと無茶な仕事を発注をしても、受注する側の能力によって労働時間は変わってきますから、一概に長時間労働を強いているとは言えないでしょう。

また人件費ですが、仮にタイムチャージ制度で、費やした時間分を請求ができたとしても、発注側に他者と比べてコスト効率が悪いと判断されれば、もう次の仕事は回ってこないかもしれません。会社を離れて「個人事業主」になるということは、それなりのリスクも背負うということです。

今回は元広告代理店に在籍した者として、新たに電通が導入した社員の「個人事業主化制度」が気になり、つい長々と書いてしましました。最後までお読みいただき、ありがとうございます。

以上、クリエイティブ・コネクション ブランド・マーケティングコンサルタントの町田芳之でした。

 

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